この度一般社団法人国際経済政策調査会(以下PSG)高橋佑代表理事より、代表理事就任の打診を受け受諾しました。歴史的には私が高エネルギー加速器研究機構(以下KEK)在職中の平成3年(1991年)に菅原寛孝KEK所長(当時)が西澤潤一東北大学学長(当時)からリニアコライダーの適地が北上山地にあるとの情報を受け、私も菅原所長と共に現地視察したことが私の東北との関わりの初めです。その後、KEKを中心としたチームは全国20か所以上の候補地を調査しました。2013年には大学を中心として編成された立地評価会議は詳細な検討を行い、北上山地は安定な地質と良好な地形がリニアコライダー建設に最適地であると判断しました。
リニアコライダーに関わる活動当初から故・椎名素夫先生(当時・参議院議員)には多大なる支援を受けました。そのベースとなったのが故・椎名悦三郎先生が設立されたPSGです。平成11年(1999年)にはPSGに「加速器科学研究会」を立ち上げ、講演会を軸に活動を続け、その回数は優に100回を超えております。リニアコライダー計画は平成17年(2005年)に全世界が一丸となって超伝導技術をベースとした国際リニアコライダー計画(以下ILC)として推進することが決まり、また北上山地は国際的にも世界で唯一の候補サイトとされています。ILC実現に向けた努力はその後、世界中の研究者・技術者・研究機関により精力的に続けられています。
ILCが実現すればアジア初となる大型国際研究機関です。そもそも国際研究機関は強権国家には馴染まない民主国家のシンボルでもあります。しかもILCはハイテック機器の集積体で、かつ多数の優秀な頭脳が世界から長期に亘り我が国に流入するという、我々が経験したことのない状況が生まれます。そのインバウンド効果だけでも大きいのですが、ハイテック集積がもたらす社会的・文化的波及効果は計り知れないものがあります。ILCは今世界が求める平和のシンボルともなるものです。
日本経済の基盤を支えてきたサイエンス分野は、論文の質と量ともに、その低下は著しく、大学教員や博士課程学生数の漸減も続いています。これと符合するように金融市場でも、日本の円はその価値を大きく減少させており、国際的存在感の低下が止まりません。この状況を打破し、次の世代に希望をもたらすためにはILCのようなプロジェクトは必須です。その実現に向けて学術、行政、政治の各プロセスと産業界を含めた全方向が一致して取り組まねばなりません。一方、平和な世界の実現と人工的な地球温暖化に歯止めをかける努力も待った無しの状況です。PSGの使命はこれらの努力をより効果的に実現することにあります。私はPSGの活動軸を以下の2項目に集約したいと考えております。
@ 加速器科学研究会を軸とした大型国際研究機関ILC実現に向けた活動
A Carbon Neutrality by 2050を目指すデジタル田園都市国家構想の推進
皆様方におかれましては今後もPSGに是非参集いただき、これらの活動に共に携わって頂きたいと思う次第です。何卒ご支援ご協力の程、宜しくお願い申し上げます。
2022年4月20日 |